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(第16回)アドネットワークとDSP

アドネットワーク(Ad Network)とDSP(Demand Side Platform)は、広告効果を最大化したい広告主にとって重要なツールです。過去のエントリでもそれぞれ触れましたが、今回は広告主から見た2つの違いや使い分けを中心に書いてみたいと思います。

まずアドネットワークとは、広告媒体のWebサイトを多数集めたネットワークを指します。ネットワーク内の多数のWebサイトに広告を配信する手法そのものを指す場合もあります。そしてDSPは、ディスプレイ広告の取引のおいて広告主に用意されたシステムで、数多くの広告枠の中から最適なものを見つけ出し、入札し、広告を配信することを可能にします。

簡単に言ってしまうと、アドネットワークは複数のWebサイトに同時に広告を配信できるツールで、DSPはそのアドネットワークを複数・一元管理して運用できるものです。

一般的にひとつのアドネットワークを導入すると一度に何千ものWebサイトに広告配信ができます。DSPを利用すれば、複数のアドネットワークに一括して広告配信できる点は魅力的ですが、1〜2つのアドネットワークのみに配信といったケースでは、DSPの利用料と効果を考慮すると、プログラマティックにDSPを運用するより手動でアドネットワークを運用したほうが効果が出る場合もあります。このようにアドネットワーク単体で運用するか、DSPを通じて運用するかは、広告主の目的に応じて使い分けが必要かもしれません。

(第15回)広告の市場動向

毎年1回「日本の広告費」という統計が発表されています。電通が主体となり、マス四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)、衛生メディア関連、インターネット、プロモーションメディアにおいて、それぞれ日本国内で1年間に使われた広告費を推定したものです。

今年は2月23日にその最新版となる「2016年(平成28年日本の広告費」が発表されました。今年目立ったトピックは以下の通りです。
日本の広告費は、5年連続でプラス成長
・総広告費は6兆2,880億円、前年比101.9%
・インターネット広告媒体費(制作費除く)が初の1兆円超え

とくに2014年以来2桁成長を続けるインターネット広告は、今年もアドテクの進化を背景とした、運用型広告を中心に今なお拡大を続けています。またSNSにおけるインフィード広告、動画広告といった新たな成長領域も見逃せません。デバイス別にみると従来型PCからスマートフォン、いわゆるモバイルシフトがより鮮明になってきています。

国内の広告市場を知るには「日本の広告費」が定番ですが、海外市場も類似する統計があります。たとえば米国はIAB/PwCによる「Internet Advertising Revenue Report」、ヨーロッパはIAB Europe、中国はiResearchによる各種レポートが参考になると思います。ちなみに米国のインターネット広告費は596億ドル(2015年、日本の約5倍)、ヨーロッパは307億ユーロ(2014年、日本の約3倍)、中国は1573億元(2014年、日本の約2倍)となっています。いずれの市場でもインターネット広告は毎年拡大を続けています。

(参考)
電通ニュースリリース「2016年 日本の広告費
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0223-009179.html
IAB
https://www.iab.com/
IAB Europe
https://www.iabeurope.eu/
iResearch
http://www.iresearchchina.com/index.html

(第14回)ネット広告で使われる基本指標

今回はネット広告でよく使われる指標をいくつかピックアップします。知っている人からすると基本的すぎる内容かもしれませんが、逆に言うと、最低限は知っておくべきレベルの内容であるともいえます。今回はネット広告の効果を測る指標と、広告の費用対効果を測る指標、あわせて8つを見ていきます。

まず広告効果を測る指標は以下が代表的です。
①インプレッション数(imps)
広告の表示回数。アドサーバから広告が配信された回数をカウントする方式や、ユーザのブラウザで表示された回数をカウントする方式がある。

②CPM(Cost Per Mile)
広告表示1000回あたりの料金。実務では、1impsあたりの料金であるインプレッション単価を使うことが多い。(広告料金 / imps)×1000(円)で算出。

③CTR(Click Through Rate)
広告のクリック率。クリック数をインプレッション数で割る。数値が高いほど広告効果も高い。(クリック数 / imps)×100(%)で算出

④CPC(Cost Per Click)
クリック単価。出稿金額をクリック数で割る。一般的には低い数値の方が広告効果が良いといえる。広告料金 / クリック数(円)で算出。

⑤コンバージョン(Conversion)
資料請求、会員登録、商品購入等の成果件数。目標件数は、各広告主のマーティング目標に応じて設定。

CPA(Cost Per Action)
顧客獲得単価。出稿金額をコンバージョン数で割る。ダイレクトレスポンス型のキャンペーンにおいては最も重要な指標といえる。とくにスマートフォンにおいてアプリのインストールを成果とする場合は、CPI(Cost Per Install)という指標が用いられる。

費用対効果を測る指標としては以下があります。
⑦ROI(Return On Investment)
投資対効果。投資額に対する成果を表す指標のこと。(平均利益単価×コンバージョン数−コスト)/ コスト×100(%)で算出。

⑧ROAS(Return On Advertising Spend)
広告費用対効果。広告費の回収率を表す指標のこと。売上 / コスト×100(%)で算出。

ちなみにROASが100%以上だったとしても、ROIが100%未満の場合は利益がマイナスになります。このようにいくら売上が立っていても、利益がなければビジネスとして失敗なので、ROASとROIを一緒にみるときはそのあたりに注意が必要です。

(第13回)DSP / SSP / RTBについて

前回のエントリでDMPについて書きました。今回はDMPにも関連する基本的なアドテク用語、三種類をとりあげます。DSP(Demand Side Platform)、SSP(Supply Side Platform)、RTB(Real Time Bidding)です。いずれも広告主と媒体主に対して、広告効果と広告収益を最大化するツールとなっています。

DSPSSPは、ディスプレイ広告の取引で広告主と媒体主それぞれに用意されているシステムを指します。広告主はDSPを使うことで、数多くの広告枠の中から最適なものを見つけ出し、入札し、広告を配信することができます。一方媒体主はSSPを使うことで、広告在庫の入札を行ない、広告枠をオークション形式で広告主と結びつけることができます。そしてRTBは、DMPとSSP間のやりとりにおいて、リアルタイムで広告枠をオークション形式で売買できる仕組みそのものを意味します。DSPSSP、RTBはそれぞれ連携しながら機能しているので、全体の流れをとらえた方がイメージしやすいかもしれません。

たとえば、ユーザがWebページを表示すると、SSPから広告に入札するかの問い合わせが複数のDSPに送られます。DSPではSSPから送られた情報にマッチした広告を瞬時に選び、広告配信の入札を行ないます。その結果、最高額の広告がWebページの広告枠に表示されます。ちなみにこの取引はミリ秒単位で行われ、Webページが表示されてからほぼリアルタイムで広告が表示されます。したがって、この広告取引全体の仕組みがリアルタイムで売買できるという意味で、RTB(Real Time Bidding)と呼ばれているわけです。

この一連のシステムによって、広告主は無駄なく最適なターゲットに向けて広告を配信でき、効率的に予算を使うことができます。媒体主も複数の広告主にリクエストできるので、広告枠の販売機会を増やすことができます。また、Webページを訪れる人にとっても自分の興味ある情報の広告が表示される可能性が高くなります。

(第12回)DMPについて

第一回目のエントリでアドテクノロジーについて少し触れました。そこでも書いたように、ネット広告の特徴は特定ユーザにピンポイントで広告を配信することにあり、それを可能にする技術がアドテクです。アドテクに関する用語はさまざまありますが、今回はDMP(Data Management Platform)を取り上げます。

DMPとは、インターネット上に蓄積されている様々な顧客データを一元管理するプラットフォームです。DMPを活用することで、特定ユーザに対する広告配信やマーケティング施策の最適化がより可能になりました。そんなDMPには以下の二種類があります。順番に見ていきましょう。

①オープンDMP
②プライベートDMP

オープンDMPは外部メディアが持つオーディエンスデータ(顧客データ)を取り扱うプラットフォームです。外部メディアが持つオーディエンスデータとは、たとえばメディアへのアクセス履歴、デモグラフィック属性、自社サイト外の行動ログといった情報を指します。オープンDMPは主に広告配信を最適化する基盤として活用されています。

逆に、プライベートDMPは自社が持つオーディエンスデータを取り扱うプラットフォームを意味します。ここでのオーディエンスデータは、広告主である事業会社が自社で保有している情報です。顧客の自社サイトアクセスデータ、購買履歴、広告出稿データなどを指します。プライベートDMPでは、主に企業内において、部署や商品ブランドを横断して顧客行動や嗜好を可視化させるといった活用がなされています。たとえばプライベートDMPの活用により、ブランドAのサイトを訪れた人はブランドBのサイトも訪れる傾向があるとわかったとします。すると企業側は「Aのサイトは訪れたが、Bのサイトには行かなかった人」に対してBへ誘導する施策をうつことが可能になります。

このようにDMPは広告配信の最適化にとどまらず、マーケティング全般にも活用できます。ちなみに広告主にとっては、オープンDMPとプライベートDMPを連携させて、よりターゲティング精度の高い広告配信とマーケティングを目的にDMPを活用するのが一般的です。

(第11回)ネット広告の料金体系

インターネット広告の取引形態にいくつかのパターンがあります。一般的に課金方法によって大きく4つに分類されます。基本的な内容ではありますが、本エントリで改めて簡単にまとめてみます。おもに広告主側の視点をまじえながら整理できればと思います。

課金方法の分類は以下のとおりです。
①期間保証型
②インプレッション保証型(表示回数)
③クリック課金・保証型
④成果報酬型(資料請求や購買等)

①は広告の出稿期間に応じて料金が決定します。たとえば「1週間の広告掲載で20万円」といった形です。ユーザが多く訪れるポータルサイトのトップページによく見られる形態です。ちなみに、ひとつの広告枠を一社独占で買い切る方式と、複数の広告主で購入して広告をローテンションで表示していく方式がとられます。最も原始的な課金方法ではありますが、広告主からすると、出稿期間中の想定インプレッション開示はあるものの保証されるのはあくまで出稿期間であるため、インプレション数の変動リスクを考慮に入れる必要があります。

②は広告の表示回数に応じて料金が決定します。たとえば「配信期間1週間を想定し20万円で1,000,000impを保証」といった形です。コンテンツページの中面の広告によく見られる形態です。ただし指定期間内にインプレッションが下振れた際は、メディア毎の免責事項によりますが、期間を延長して補填する形が多いようです。

③は広告がクリックされる回数に応じて料金が決定します。たとえばクリック課金型だと「クリック単価20円、5,000クリックの設定で料金は10万円(=20×5,000)」クリック保証型だと「最初に料金10万円と決定。5,000クリックされるまで広告を出稿」とった形です。いずれもリスティング広告によく見られる形態です。クリック数と自社サイトに誘導されたユーザ数が一致するので、広告主からすると効率的な料金体系といえます。

④は実際に発生した成果に応じて料金が決定します。具体的には資料請求、会員登録、商品購入、アプリインストールとった成果を指します。たとえば「商品購入1件あたり5,000円の成果報酬。これが10件発生すると5万円(=5,000×10)の課金」といった形です。アフィリエイト広告によく見られる形態で、費用対効果を重視する広告主からすると非常にリスクの少ない料金体系といえます。

ちなみに①から④の順に、具体的な効果をもとに広告料金が決定されるため、広告主からするとクリック数やコンバージョン数を単位にした③と④が一般的に好まれます。逆に媒体社からすると、①から④の順に広告主に課金できないリスクが高くなるため、出稿期間やインプレッション数を単位とした①と②の広告メニューが好まれる傾向にあります。

(第10回)広告掲載レポート

ネット広告の業務フローの一つに「レポーティング業務」があります。広告キャンペーン終了後、広告会社やメディアレップが、インプレッション数やクリック数、コンバージョン数やCPA等といったアドサーバーから出力されたデータをまとめる作業を指します。まとめたものは広告掲載レポートとして、広告キャンペーン終了から数週間後に広告主に提出されます。広告会社にとっては、広告費請求・支払いの根拠となる納品書でもあり、広告主にとっては次回のキャンペーンに活かすためのマーケティングデータという側面もあります。

広告掲載レポートの内容については、枠売り広告と運用型広告ですこし異なります。枠売り広告は、①キャンペーン内容(広告主名、広告会社名、広告メニュー名、掲載期間等)②サマリーレポート(掲載期間中の総インプレッション数、総クリック数、CTR等)③日別レポート/クリエイティブ別レポート(日別またはクリエイティブ別のインプレッション数、クリック数、CTR等)を含んでいるのが一般的です。

運用型広告は、プラットフォームが提供するレポート画面を利用して、上記に加えてデバイス別や掲載面別のインプレッション数やクリック数、クリエイティブ別のコンバージョン数やCPA等といった、より詳細な数値も含まれてきます。そんな広告計測指標があふれる状況に対して、最近はレポーティング業務を効率化するツールも増えています。運用型広告レポート作成支援システムの「glu」、マーケティング施策の全量データをダッシュボードで一元管理できる「Datorama」などが挙げられます。

このようにレポーティングの過程では、広告効果に関するさまざまな数値が得られます。とはいえ、キャンペーンの目的やゴールに応じて評価軸は異なるため、オリエンテーションやプランニングの段階から重要視する指標・目標値を広告主と共有することが大切です。またそれを前提としたレポート作成が求められると思います。