ECの世界

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(第6回)動画広告の基本的な話

2017年現在、スマートフォン広告市場の中でとくに伸びている・今後も継続的成長が見込める分野はインフィード広告と動画広告の2つである。過去のエントリでそのように書きました。インフィード広告は第4回で少し触れましたので、今回は動画広告について基本的なことを簡単にまとめます。

まず動画広告には大きく3種類あります。①インストリーム広告 ②インバナー広告 ③インリード広告 です。①はYouTubeなどの動画視聴サイトで、動画コンテンツの視聴前に差し込まれる動画広告を指します。視覚的なインパクトが強く、市場規模の観点(後述)から見ても動画広告の主流フォーマットに位置づけられています。ちなみにインストリーム広告は差し込まれるタイミングによって3種類(プレロール:動画再生前、ミッドロール:動画再生途中、ポストロール:動画再生後)に細分化できますが、現在はプレロールが最も普及しています。

②はバナー広告枠に表示される動画広告を指します。要するに従来のバナー広告枠のバナー画像が、単純に動画広告に置き換わったものです。インストリームと違い、動画視聴サイトを利用しないユーザーにもターゲティング可能な一方、従来のバナー広告に慣れたユーザーに対しては視認性が低いとも言われています。

③はユーザーがWebページをスクロールする途中、突然動画が出現し自動的に動画広告がはじまるような形式を指します。主にメディア記事の中で目にすることが多いかもしれません。もし記事内容と関連性の高い動画広告であれば、メインコンテンツと同じ枠に表示されることも手伝って、比較的視認性は高くなるとも言われています。

ついでに市場規模も見ておきましょう。2016年の動画広告市場は842億円※(前年対比157%)の見通し。今後も中長期的な成長トレンドは続き、2022年には2,918億円※に達する見込みです。広告主による自社製品・サービスの認知拡大や購入促進、ブランディングを目的とした出稿需要の増加がこの流れを後押しするとしています。また市場規模を広告商品別にみると、インストリーム広告が市場全体の52%を占める439億円※(2016年)と市場を牽引しています。動画出稿媒体については、引き続きYouTubeなどの動画視聴サイト、FacebookTwitterなどのソーシャルメディアが主流であり続けると見られています。
※(引用元)オンラインビデオ総研/(株)デジタルインファクト共同調査
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/info/detail/id=12795

(第5回)メディアレップの機能

メディアレップ(Media Representative)とは、インターネット広告の取引において、広告代理店と媒体社の仲介役を担う事業者を指します。広告代理店から見るとメディアレップは広告商品の買付窓口であり、逆に媒体社から見ると販売窓口となっています。メディアレップは単純に広告商品の卸売のような役割に留まらず、広告プランニングや広告配信、マーケティング支援といったサービスも提供しています。

国内の主要なメディアレップとしては、電通ソフトバンクの合弁であるサイバー・コミュニケーションズCCI)、博報堂アサツーディ・ケイなどが出資するデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムDAC)が挙げられるでしょう。これらの大手メディアレップは、特定の広告商品に対する独占的な販売権を保有しているケースもあります。

近年スマートフォンシフトが進み、媒体社や広告主がメディアレップに寄せる期待はますます高まっています。たとえば広告主は、1000以上の豊富なメディアの中から個別企業に最適なパッケージを選んでくれるというところにメディアレップの価値を認めてきました。最近はそれに加えてとくにアドテクを絡めた提案にも価値を求めています。とはいえメディアレップ側からすると、媒体社と広告主を仲介して広告収益と広告効果の向上に貢献していく、という従来からの大きな役割に変わりはありません。

(第4回)定着したインフィード広告

現在スマートフォン上における主要な広告フォーマットはいくつかありますが、とりわけインフィード広告はその筆頭と言えます。ソーシャルメディアやニュースアプリなど、タイムライン型メディアのコンテンツとコンテンツの間に表示される広告を指します。ユーザーのメディア利用体験を妨げない、コンテンツと一体感のあるデザインであることから、2015年頃からスマートフォン向けの新しい広告フォーマットとして急速に広がりました。登場初期は、新たな広告手法ということで短期トレンドと見る向きもありましたが、ユーザービリティの観点から、最適な広告フォーマットとして広告主から実績ベースで広く受け入れられています。

そんなインフィード広告市場ですが、2017年2月9日に(株)サイバーエージェントと(株)デジタルインファクトが発表した共同調査によると、2016年は1,401億円(前年比8割増)、2022年には3,013億円と、今後数年も堅調な成長が見込まれています。広告配信先は2016年はソーシャルメディアが64%でした。2022年にはソーシャルメディアが60%、ニュース・ポータル・その他が40%と、多少分散化するものの、インフィード広告の主戦場は依然としてソーシャルメディア上であり続けるだろうというのが同社の見立てです。

また、つい先日(2017年2月8日)には、中国最大の検索エンジン百度バイドゥ)がインフィード広告の提供を開始しました。インバウンドの旅行客や、越境ECのユーザーを取り込みたい日本企業にとって、中国市場に向けた有効なアプローチの一つになるかもしれません。


(参考)
サイバーエージェント、インフィード広告市場調査を実施」
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=13301
百度アプリ(手机百度/Baidu Mobile)にてインフィード広告を販売開始」
https://www.baidu.jp/info/press/jp/170208.html

(第3回)JIAAとガイドライン

一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)という組織があります。インターネット広告市場の健全な発展と、社会的信頼の向上を図ることを目的に1999年5月に発足しました。会員社数は228社(2017年1月31日現在)で、国内最大手の媒体社やメディアレップ、広告会社を中心とした企業で構成されています。JIAAが行なう活動は様々ですが、その中のひとつにガイドライン策定があります。

これまでJIAAが公開したものは以下の通りです。
①「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」(2000年5月制定・2012年6月改定・2015年3月改定)
②「ネイティブ広告に関する推奨規定」(2015年3月制定)
③「プライバシーポリシーガイドライン」(2004年11月制定・2016年5月改定)
④「行動ターゲティング広告ガイドライン」(2009年3月制定・2016年5月改定)

主な内容ですが、①は消費者目線に基づくインターネット広告掲載の可否判断の基準が示されています。②はネイティブ広告の広告表記、広告主体者の明示、広告審査に関する推奨事項を記しています。③はインターネット広告事業において取得・管理・利用される個人関連情報の取扱に関して、遵守すべき基本的事項が規定されています。④はインターネット上におけるユーザーの行動履歴情報を利用する行動ターゲティング広告に関して、遵守すべき基本的事項が示されています。

いずれのガイドラインも、広告主や消費者のインターネット広告に対する安全性や信頼性の向上を目的としています。とはいえ、インターネット広告は市場全体における変化のスピードが速いこともあり、突如新たなガイドライン策定や改訂が求められることもあるかもしれません。たとえば新たな広告手法が普及していく過程で、消費者と事業者に認識の齟齬が広がり、最終的に業界標準のルールを求める社会的要請が高まるケースが考えられます。場合によっては新たな法整備や規制強化といった動きにつながるかもしれません。いずれにしても事業者側からすると、法的規制に関するリスク要因の視点は重要で、リスク発生の回避、あるいは発生時の対応まで考慮にいれた事業活動が求められます。

(第2回)スマホとアドネットワーク

2016年のスマートフォン広告市場規模は4,542億円※(前年比122.2%)、2017年には5,369億円※に達すると見られています。ソーシャルメディア向け広告や動画広告の需要拡大が市場成長に寄与しており、この傾向は数年続くとされ、2020年には2015年の約2倍、約7,500億円※に迫るとする予測もあります。
※(引用元)(株)CyberZ/デジタルインファクト共同調査
https://cyber-z.co.jp/news/research/2016/0420_3573.html

拡大を続けるスマートフォン広告市場ですが、その黎明期は2010年頃とされています。中でも当時からアドネットワークは「スマートフォン広告の主戦場」と呼ばれるほど重要な位置づけでした。理由はいくつかありますが、PC広告が純広告からスタートしたのに対して、スマートフォン広告はアドネットワークからスタートしたことが大きいように思います。スマートフォンでPVの多いメディアがまだ少なかった当時、まとまったPVを広告主に提供できる最適な方法がアドネットワークだったわけです。コストの安さもあいまってその流れは一気に定着しました。

スマートフォン向けアドネットワークの事業者は大小含め多数あります。それぞれに特徴があり、業種やサービスもさまざまですが代表的なところとして、大企業の広告や有名サイト、アプリの広告数が国内最大級のnend(株式会社ファンコミュニケーションズ)やi-mobile(株式会社アイモバイル)、出稿実績の約25%がEC事業者で、ECクライアントに強みを持つAMoAd(株式会社AMoAd)などが挙げられると思います。いずれに共通するのは、①多くの広告在庫を持っている ②豊富な配信、運用、ターゲティング機能を持っている ③市場創成期にサービスを立ち上げ、運用してきた豊富な実績がある、といったところではないでしょうか。

今回はスマートフォン広告とアドネットワークをテーマに選んでみましたが、とくにスマートフォン広告市場は、インフィード広告や動画広告の拡大にひっぱられて今なお成長を続けていて目が離せません。市場や技術トレンドも日々変化しています。引き続き他にもいろんな切り口で調べたいと思っています。

(第1回)ネット広告とアドテク

ネット広告の特徴は特定ユーザーにピンポイントで広告を配信することにあります。それを可能にする技術がアドテク、つまりアド(広告)テクノロジー(技術)です。

アドテクといっても、その種類や要素技術、関連するプレイヤーが複雑に入り組んでいて、ひとつの小宇宙のような世界が形成されています。その様子は、米国LUMApatners作成の「Display LUMAscape」を下敷きにxAd Japanの近藤洋司氏が作成した有名なカオスマップ「Display Advertising Technology Landscape」に見ることができます。
(引用元)http://www.slideshare.net/HiroshiKondo/jp-chaosmap-20152016

本格的なアドテク時代の到来は、2008年頃のアドネットワーク(Ad Network)からと認識されることが多いようです。アドネットワークとは、広告媒体のWebサイトを多数集めたネットワークを指します。ネットワーク内の多数のWebサイトに広告を配信する手法そのものを指す場合もあります。

2010年頃からはアドエクスチェンジ(Ad Exchange)と呼ばれる、広告枠の取引市場が登場しました。それによりアドネットワーク内にある広告枠を1インプレッション(1表示)ごとに売買することが可能になりました。広告枠の価格は、需要サイドの広告主と供給サイドのメディアの需給バランスによって変動します。まさに市場として機能しているわけです。

それ以降もDSP(Demand Side Platform)、SSP(Supply Side Platform)、DMP(Data Management Platform)、RTB(Real Time Bidding)など、広告主とメディア双方に対して、広告効果と広告収益の最大化を支援する技術やプラットフォームが次々に登場しています。今後もテクノロジーの進化にともなってこの動きは加速すると思われます。そのようにますます複雑化・高度化するアドテクに対して、ユーザーに最適な広告を配信するという本質はおさえつつ、今後も最新動向をチェックしたいと思っています。