ECの世界

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(第27回)KPMG実施 - 消費者プライバシーに関する意識調査

最近のエントリは、ネット広告に対する意識調査絡みのテーマが多くなっています(とくに意図していませんが)。今回もそれに関連する別の調査結果を発見したので、ついでに取り上げたいと思います。

2月17日にKPMGコンサルティング株式会社(以下KPMG)が発表した「消費者プライバシーデータに関するグローバル意識調査2017」です。世界24ヵ国、約7000人のユーザを対象に実施。同調査の目的は、インターネットの任意のサイトやアプリ利用時に求めれれる「個人データ」が、どのレベルから「不快でプライバシーを侵害する」とユーザに思わせてしまうのか、その境界線を探りあてようとしたものです。

結論からいうと、ユーザは総じて個人データの取扱に関心を寄せており、少なからずネットへの個人データ提供に慎重になっていることが明らかになりました。たとえば「プライバシーを保護するため、どのような事をしているか」という問いに対しては、「ブラウザのCookieを削除する」というユーザが60%いることが明らかになりました。Cookieはターゲティング広告に使われる場合も多いことから、これは広告主にとっては無視できない回答結果です。また「広告をブロックするソフトウェアを使っているユーザは40%近く」という回答結果も同様に見逃せません。

同調査からわかった大きなポイントは、①消費者の57%はプライバシーポリシーをほとんど読まない ②84%の消費者が連絡先や写真、閲覧履歴へのアクセスを求めるアプリを容認していない ③世界の消費者の約60%がクッキーを削除している、以上の3点です。ちなみに3点それぞれの詳細は、以下KPMGのリリースに詳しいです。
https://home.kpmg.com/jp/ja/home/media/press-releases/2017/02/cyber-privacy-data.html

(第26回)AdRoll実施 - マーケターとユーザを対象としたネット広告の意識調査

米国リターゲティング広告大手のAdRoll株式会社が「消費者リサーチ2017 - クリックされない広告から考える広告施策の指標と対策」を発表しました。同レポートは、2016年9月から11月までの間、日本で広告出稿業務に関わるマーケティング担当者200名およびインターネット広告ユーザ1000名を対象に実施されたものです。

調査トピックとしては、以下のような項目が並んでいます。
①マーケターによるインターネット広告利用状況およびリターゲティング広告の認知・利用状況
②インターネット広告で評価するポイントと不安要素
③マーケターの広告施策実施の現状および課題
④ネット広告を見た後の行動
⑤間接的な効果指標計測の有無

①〜⑤に関してどのような調査結果が出たのか順に見ていきましょう。

まず①に関しては、リテンション施策を「何もしていない」のが18.5%、「リターゲティング広告を知らない」のが23%であったことから、多くのマーケターがインターネット広告の重要性を感じつつも、実際の取り組みにはさらなるポテンシャルがあることが伺えます。②に関しては、マーケターがインターネット広告を評価するポイントは「費用対効果」が76.5%と回答した一方、61.7%のマーケターがその「費用対効果」が不明瞭と感じているようです。

③に関しては、マーケターが重視するKPIは効果測定のしやすさから「ユーザリーチ数」「クリック数」が上位を占めました。課題としては、投資対効果の鈍化を感じる回答が多く寄せられています。同レポートはその理由のひとつとして、ユーザとマーケターの間の意識の違いを指摘しています。なぜなら同調査レポートから「インターネット広告を意識して見ることがよくある」と回答したユーザは全体の10.1%、「よくクリックする」と回答したユーザは6.4%で、1割にも満たない現状も明らかになっているからです。

④に関しては、クリックをせずに購買に結びついたケースも一定の割合で存在することが明らかになりました。そして⑤に関しては、アトリビューション分析に代表される間接的な効果指標計測を実施したことがあるマーケターは全体の約半数、残りの半数は実施経験がないまま現在に至っていることが明らかになりました。この結果は、多くのマーケターがいまだラストクリックのみを KPI にした施策を継続していることを示唆しています。

①〜⑤の調査トピックの結果から、2017年のデジタルマーケティングが次のステップに進むために、「ラストクリック依存からの脱却」を課題として認識し、新たなKPIの設定と、そのためのテクノロジーソリューションの見極めが必要であると同レポートは結んでいます。


(参考)
AdRoll「クリックされない広告から考える広告施策の指標と対策」発表
http://news.mynavi.jp/news/2017/02/28/106/
AdRoll消費者リサーチ2017調査レポート
https://www.adroll.com/ja-JP/resources/guides-and-reports/consumer-research-jp

(第25回)アドブロックの利用状況

2017年2月15日、米eMarketerはインターネットコンテンツ閲覧の広告遮断に関する調査結果を発表しました。同社によると、米国における広告遮断のソフトウェアやサービスを利用する人の数は2017年に7510万人に達し、これは同国インターネット人口の27.5%を占める見通しです。

広告遮断のソフトウェアやサービス利用者のデバイス別比率を見ると、2016年はパソコンが17.7%、スマートフォンが5.9%とのことです。2017年にはそれぞれ20.1%、7.9%に増加すると同社は分析しています。ちなみに、広告遮断の利用者は若年層が圧倒的に多く、ミレニアル世代(1980年前後から1995年ごろまでに生まれた人)が全体の41.1%を占め、その数値は、X世代(1965年〜1976年ごろに生まれた人)の26.9%や、ベビーブーマー世代の13.9%を大きく引き離しています。

なお広告遮断については、パブリッシャーが無視できない問題のひとつとしてよく話題になっています。とくに欧米では日本よりアドブロックの利用者が多く、ニュースをオンラインで読む35歳未満の間で広く普及しています。ロイター研究所が2016年に発表した、世界26カ国、5万人以上のオンラインニュース利用者を対象とした「Digital News Report 2016」によると、アドブロックの利用状況は米国24%、英国21%、ドイツ25%であるのに対し、日本は10%にとどまっています。

日本の数値が他国に比べて低い理由は、単純にアドブロックが広く認知されていないからと言われています。そしてユーザがアドブロックを利用する理由としては、広告そのものの量と、過度な追跡をする広告に嫌気がさしているのが圧倒的多数の意見として挙げられています。最近はアドブロック利用率の高い若年層の間で無料ニュースの広告を受け入れる傾向がでてきたり、ブロック困難なスポンサードコンテンツのような広告フォーマットも普及するなど、パブリッシャーにとって悪くない兆しもありますが、アドブロックのトレンドは引き続き定点観測が必要かもしれません。


(参考)
米国ユーザーの3割がネット広告をブロック、7510万人が遮断ソフトやサービスを利用
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/021700528/?rt=nocnt
「Digital News Report 2016」 Reuters Institure
http://www.digitalnewsreport.org/

(第24回)ジャストシステム、モバイルとSNSに関する月次調査結果を発表

ジャストシステムは『モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2017年2月度)』の結果を発表しました。同調査は15〜69歳の男女1100名を対象に調査を実施。主に各年代のニュース情報源、広告接触、それらがどのデバイスやメディアを通してなされているかの傾向が読み取れます。

「ニュースの収集は新聞よりもスマートフォン」「10代のスマートフォン利用者のうち、7割はSNS上の投稿やニュースから情報収集」といった、感覚的に違和感がないと思われる結果が並びますが、やはり実際に数字で見ると説得力を伴う気がします。主な調査結果のサマリは以下の通りです。

全年代が「ニュースの収集は新聞よりも、スマートフォン
スマートフォン利用者に、ニュースなどの情報収集目的で1日に最も接触する頻度が高いメディアを聞いたところ、「スマートフォンからのインターネットやアプリ」が最も多く(44.9%)、次いで「パソコンからのインターネット」(24.9%)、「テレビ」(24.4%)。新聞や雑誌、ラジオは全年代で10%を下回る。

10代のスマートフォン利用者のうち、7割は「SNS上の投稿やニュース」から情報収集
スマートフォンでニュースなどの情報収集をする際に最も利用するのは「インターネット」(74.8%)、次に「ニュースアプリ(新聞社やテレビ局以外)」(49.1%)、「SNSの投稿やニュースコンテンツ」(48.5%)でした。年代別で見ると、20代以上は「インターネット」が最も利用するメディアだったにもかかわらず、10代だけは「SNSの投稿やニュースコンテンツ」(69.2%)を挙げる人が最も多く、「インターネット」(67.3%)をわずかに上回る(複数回答あり)

スマートフォン利用者の広告接触率は、1位「テレビ」、2位「スマートフォン」、3位「パソコン」
スマートフォン利用者に、普段、広告を目にするメディアを聞いたところ、「テレビ」が最も多く(73.9%)、次いで「スマートフォンからのインターネットやアプリ」(67.7%)、「パソコンからのインターネット」(58.3%)(複数回答あり)


(参考)
ジャストシステム、「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2017年2月度)」結果を発表
http://www.nikkei.com/article/DGXLRSP438813_Y7A300C1000000/
「Marketing Research Camp(マーケティング・リサーチ・キャンプ)」
https://marketing-rc.com/report/

(第23回)AIを活用したアウトドアメディアの広告配信システム

新しいアウトドアメディア(デジタルサイネージ)のプロトタイプが発表されました。「Face Targeting AD(フェイスターゲティング・アド)」と呼ばれるもので、画面の前にいる人の顔や感情に合わせて商品やサービスの広告を出し分ける広告配信システムです。

博報堂がコンセプトとクリエイティブ全般を担当、博報堂アイ・スタジオが顔認証の技術開発や特徴別の広告配信システムの開発および鏡型アウトドアメディアの設計を担当、そしてマイクロソフトMicrosoft Azure上のAIサービス「Microsoft Cognitive Services」の実装などの技術開発サポートを担うという、3社共同開発の製品となっています。

「Face Targeting AD」の実際の利用シーンとして、次のような場面をイメージするとわかりやすいかもしれません。たとえば駅や街中に設置されたデジタルサイネージの前に誰かが立っている。すると「Face Targeting AD」がその人の年齢や性別、顔の特徴や表情を読み取る。それをAIが分析し、もし疲れていそうだと判断すれば栄養ドリンクの広告を、悲しそうだと判断すれば感動的な映画の動画広告を画面に表示するといった具合です。

画面の前にいる人を問わず、送り手が用意した広告を一様に表示し続ける従来のデジタルサイネージと違い、より効率的な広告効果が期待できるかもしれません。なお、同製品は3月12日からアメリカ・テキサスで開催される「サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)2017」の博報堂ブースにて体験展示される予定とのことです。


(参考)
博報堂博報堂アイ・スタジオ、日本マイクロソフト、AI を活用したターゲティング広告配信システムのプロトタイプ開発で連携
https://news.microsoft.com/ja-jp/2017/03/09/170309-face-targeting-ad/#sm.0000b1gflcpkfd8ttyx13oe7dbdc6#pZ0jLorPs8VJFrmc.97

(第22回)Instagram Stories上の広告提供

Instagramは、投稿内容が24時間で自動的に消え、写真や動画を気軽に投稿できるインスタグラム ストーリーズ(Instagram Stories)における広告提供を開始しました。2017年1月からNikeNetflixMaybelline New Yorkなど広告主を限定して試験運用しており、今回より提供対象をさらに拡大するとしています。同サービスにより広告主は広告測定機能による効果確認、また出稿にあたっては広告を表示するオーディエンスの最大化、表示頻度の調整も可能です。

記事では活用事例でAirbnbが取り上げられています。「Experiences on Airbnb」という新しいプロダクトの認知度向上のため15秒の動画広告シリーズを作成、インスタグラム ストーリーズ上で配信しました。このキャンペーンにより広告想起率が2桁ポイント上昇したほか、旅行者が現地観光ツアーやアクティビティ検索・予約サービスにAirbnbを選ぶケースが増えるなど一定の効果が示されています。

ストーリーズ上での広告表示は、Instagramにとって新たな収益の柱となるかもしれません。市場調査会社eMarketerが2016年11月に試算した結果によると、Instagramの広告売上高は18億5000万ドルです。ストーリー機能も収益化できれば、この現在のメインフィードの広告売上をさらに押し上げるはずです。


(参考)
インスタグラム、ストーリーズを活用した広告提供開始
http://rtbsquare.ciao.jp/?p=14794
How do I create ads that run on Instagram Stories?
https://www.facebook.com/business/help/1639197963055851

(第21回)吉本、所属タレントを活用した新事業開始

吉本グループが所属タレント約6000人を活用したインフルエンサーマーケティング事業を開始。企業の商品・サービスの特性に合わせて、所属タレントがSNS上で情報発信を行ない、さらなる効果や波及をサポートするといったものです。吉本グループは、Instagramで600万人超えの日本最多フォロワー数を誇る渡辺直美を筆頭に、所属タレント(芸人、アイドル、スポーツ選手、文化人など)のSNS上のフォロワー総数がTwitterで4000万人以上、Instagramで1600万人以上など国内最大規模となっています。事業開始のタイミングでは、まずInstagramを中心としたマーケティングを行う予定とのことです。

吉本側としては所属タレントの情報発信力をビジネス化でき、広告主側としても一般消費者により大きな影響力を見込める同サービスに寄せる期待は大きく、双方にとってメリットがあります。一方で運用の際に注意すべき点もあります。それはステルスマーケティング、通称ステマです。

インフルエンサーマーケティングは「広告の体裁をとらない広告」でより自然に商品やサービスを訴求できる点が魅力ですが、運用面で一歩間違えると消費者との間で法的トラブルも起こしかねません。もし消費者を騙したかのような印象を与えると、商品やサービス自体にネガティブイメージが持たれたり、またタレント自身もそれに加担したとして、好感度も大きく損なわれてしまうことも大いにありえます。そのため吉本と広告主双方としては、JIAAが定めるガイドラインから逸脱するものにならないよう、より慎重な運用が求められそうです。

(参考)
吉本グループ、所属芸人を活用したインフルエンサーマーケティング事業を開始
http://www.nikkei.com/article/DGXLRSP437820_X20C17A2000000/
ネイティブ広告に関するガイドラインを策定(JIAA)
http://www.jiaa.org/release/release_nativead_150318.html