ECの世界

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(第13回)DSP / SSP / RTBについて

前回のエントリでDMPについて書きました。今回はDMPにも関連する基本的なアドテク用語、三種類をとりあげます。DSP(Demand Side Platform)、SSP(Supply Side Platform)、RTB(Real Time Bidding)です。いずれも広告主と媒体主に対して、広告効果と広告収益を最大化するツールとなっています。

DSPSSPは、ディスプレイ広告の取引で広告主と媒体主それぞれに用意されているシステムを指します。広告主はDSPを使うことで、数多くの広告枠の中から最適なものを見つけ出し、入札し、広告を配信することができます。一方媒体主はSSPを使うことで、広告在庫の入札を行ない、広告枠をオークション形式で広告主と結びつけることができます。そしてRTBは、DMPとSSP間のやりとりにおいて、リアルタイムで広告枠をオークション形式で売買できる仕組みそのものを意味します。DSPSSP、RTBはそれぞれ連携しながら機能しているので、全体の流れをとらえた方がイメージしやすいかもしれません。

たとえば、ユーザがWebページを表示すると、SSPから広告に入札するかの問い合わせが複数のDSPに送られます。DSPではSSPから送られた情報にマッチした広告を瞬時に選び、広告配信の入札を行ないます。その結果、最高額の広告がWebページの広告枠に表示されます。ちなみにこの取引はミリ秒単位で行われ、Webページが表示されてからほぼリアルタイムで広告が表示されます。したがって、この広告取引全体の仕組みがリアルタイムで売買できるという意味で、RTB(Real Time Bidding)と呼ばれているわけです。

この一連のシステムによって、広告主は無駄なく最適なターゲットに向けて広告を配信でき、効率的に予算を使うことができます。媒体主も複数の広告主にリクエストできるので、広告枠の販売機会を増やすことができます。また、Webページを訪れる人にとっても自分の興味ある情報の広告が表示される可能性が高くなります。

(第12回)DMPについて

第一回目のエントリでアドテクノロジーについて少し触れました。そこでも書いたように、ネット広告の特徴は特定ユーザにピンポイントで広告を配信することにあり、それを可能にする技術がアドテクです。アドテクに関する用語はさまざまありますが、今回はDMP(Data Management Platform)を取り上げます。

DMPとは、インターネット上に蓄積されている様々な顧客データを一元管理するプラットフォームです。DMPを活用することで、特定ユーザに対する広告配信やマーケティング施策の最適化がより可能になりました。そんなDMPには以下の二種類があります。順番に見ていきましょう。

①オープンDMP
②プライベートDMP

オープンDMPは外部メディアが持つオーディエンスデータ(顧客データ)を取り扱うプラットフォームです。外部メディアが持つオーディエンスデータとは、たとえばメディアへのアクセス履歴、デモグラフィック属性、自社サイト外の行動ログといった情報を指します。オープンDMPは主に広告配信を最適化する基盤として活用されています。

逆に、プライベートDMPは自社が持つオーディエンスデータを取り扱うプラットフォームを意味します。ここでのオーディエンスデータは、広告主である事業会社が自社で保有している情報です。顧客の自社サイトアクセスデータ、購買履歴、広告出稿データなどを指します。プライベートDMPでは、主に企業内において、部署や商品ブランドを横断して顧客行動や嗜好を可視化させるといった活用がなされています。たとえばプライベートDMPの活用により、ブランドAのサイトを訪れた人はブランドBのサイトも訪れる傾向があるとわかったとします。すると企業側は「Aのサイトは訪れたが、Bのサイトには行かなかった人」に対してBへ誘導する施策をうつことが可能になります。

このようにDMPは広告配信の最適化にとどまらず、マーケティング全般にも活用できます。ちなみに広告主にとっては、オープンDMPとプライベートDMPを連携させて、よりターゲティング精度の高い広告配信とマーケティングを目的にDMPを活用するのが一般的です。

(第11回)ネット広告の料金体系

インターネット広告の取引形態にいくつかのパターンがあります。一般的に課金方法によって大きく4つに分類されます。基本的な内容ではありますが、本エントリで改めて簡単にまとめてみます。おもに広告主側の視点をまじえながら整理できればと思います。

課金方法の分類は以下のとおりです。
①期間保証型
②インプレッション保証型(表示回数)
③クリック課金・保証型
④成果報酬型(資料請求や購買等)

①は広告の出稿期間に応じて料金が決定します。たとえば「1週間の広告掲載で20万円」といった形です。ユーザが多く訪れるポータルサイトのトップページによく見られる形態です。ちなみに、ひとつの広告枠を一社独占で買い切る方式と、複数の広告主で購入して広告をローテンションで表示していく方式がとられます。最も原始的な課金方法ではありますが、広告主からすると、出稿期間中の想定インプレッション開示はあるものの保証されるのはあくまで出稿期間であるため、インプレション数の変動リスクを考慮に入れる必要があります。

②は広告の表示回数に応じて料金が決定します。たとえば「配信期間1週間を想定し20万円で1,000,000impを保証」といった形です。コンテンツページの中面の広告によく見られる形態です。ただし指定期間内にインプレッションが下振れた際は、メディア毎の免責事項によりますが、期間を延長して補填する形が多いようです。

③は広告がクリックされる回数に応じて料金が決定します。たとえばクリック課金型だと「クリック単価20円、5,000クリックの設定で料金は10万円(=20×5,000)」クリック保証型だと「最初に料金10万円と決定。5,000クリックされるまで広告を出稿」とった形です。いずれもリスティング広告によく見られる形態です。クリック数と自社サイトに誘導されたユーザ数が一致するので、広告主からすると効率的な料金体系といえます。

④は実際に発生した成果に応じて料金が決定します。具体的には資料請求、会員登録、商品購入、アプリインストールとった成果を指します。たとえば「商品購入1件あたり5,000円の成果報酬。これが10件発生すると5万円(=5,000×10)の課金」といった形です。アフィリエイト広告によく見られる形態で、費用対効果を重視する広告主からすると非常にリスクの少ない料金体系といえます。

ちなみに①から④の順に、具体的な効果をもとに広告料金が決定されるため、広告主からするとクリック数やコンバージョン数を単位にした③と④が一般的に好まれます。逆に媒体社からすると、①から④の順に広告主に課金できないリスクが高くなるため、出稿期間やインプレッション数を単位とした①と②の広告メニューが好まれる傾向にあります。

(第10回)広告掲載レポート

ネット広告の業務フローの一つに「レポーティング業務」があります。広告キャンペーン終了後、広告会社やメディアレップが、インプレッション数やクリック数、コンバージョン数やCPA等といったアドサーバーから出力されたデータをまとめる作業を指します。まとめたものは広告掲載レポートとして、広告キャンペーン終了から数週間後に広告主に提出されます。広告会社にとっては、広告費請求・支払いの根拠となる納品書でもあり、広告主にとっては次回のキャンペーンに活かすためのマーケティングデータという側面もあります。

広告掲載レポートの内容については、枠売り広告と運用型広告ですこし異なります。枠売り広告は、①キャンペーン内容(広告主名、広告会社名、広告メニュー名、掲載期間等)②サマリーレポート(掲載期間中の総インプレッション数、総クリック数、CTR等)③日別レポート/クリエイティブ別レポート(日別またはクリエイティブ別のインプレッション数、クリック数、CTR等)を含んでいるのが一般的です。

運用型広告は、プラットフォームが提供するレポート画面を利用して、上記に加えてデバイス別や掲載面別のインプレッション数やクリック数、クリエイティブ別のコンバージョン数やCPA等といった、より詳細な数値も含まれてきます。そんな広告計測指標があふれる状況に対して、最近はレポーティング業務を効率化するツールも増えています。運用型広告レポート作成支援システムの「glu」、マーケティング施策の全量データをダッシュボードで一元管理できる「Datorama」などが挙げられます。

このようにレポーティングの過程では、広告効果に関するさまざまな数値が得られます。とはいえ、キャンペーンの目的やゴールに応じて評価軸は異なるため、オリエンテーションやプランニングの段階から重要視する指標・目標値を広告主と共有することが大切です。またそれを前提としたレポート作成が求められると思います。

(第9回)スマートフォンと縦型動画

ユーザーのメインデバイスがPCからスマートフォンへと移行する中、動画視聴環境も徐々にスマホシフトが進んでいます。スマホ画面に最適化された動画アプリが続々とリリースされている状況、また2020年に向けて総務省主導で第5世代移動通信方式(5G)の開発・インフラ整備が展開されている状況を考えると、この傾向はますます加速すると思われます。

そんなスマホの動画視聴環境ですが、「縦型動画」「横型動画」に注目したテーマがよく話題にのぼります。両者の特徴や違い、今後の動画視聴フォーマットの主流、それに合わせた動画広告のあるべき姿、といった内容が目立ちます。現在のトレンドとしては縦型動画が主流になりつつあります。海外ではメッセージアプリのSnapchatやライブストリーミングアプリのMeerkat、国内では縦型動画メディアサービスのC CHANNELがその代表例です。いずれもミレニアル世代に幅広く支持されています。

縦型動画が主流になりつつあるとはいえ、横型動画の需要がなくなったわけではありません。むしろAbemaTV、Netflix、Hulu、TVerなどコンテンツ一つひとつの時間が長く、テレビや映画の感覚でしっかりと視聴することが前提の動画コンテンツは横型に優位性があると言えるでしょう。動画コンテンツの性格によって「縦型動画」と「横型動画」は今後も棲み分けがなされていくと思います。

(第8回)広告クリエイティブとしてのUGC

2015年頃から企業の間で自社商品のUGC(User Generated Content)を広告のクリエイティブとして活用するケースが増えています。UGCとはユーザーによって作成されたコンテンツの総称で、SNSやブログ、動画投稿サイトや写真共有サイトなどに投稿されたあらゆる全てのコンテンツを含んでいます。ただし広告クリエイティブの文脈で登場するUGCは、大体においてSNSに投稿された写真を意味する場合がほとんどです。

広告クリエイティブとしてのUGCは、とくにSNS上のインフィード広告と親和性が高く、普段何気なくタイムラインを眺めているとき目にすることも多いかと思います。では、なぜこのようなUGCの活用が増えてきているのでしょうか?

その背景には、商品購入に対するユーザーの意思決定は、UGCによって大きく左右されるという現状があります。たとえば洋服を買いたいと思ったとき、SNSに投稿されたコーディネート写真を参考にして、よりリアルな使用感や利用シーンを知った上で購入の判断に至る、といった具合です。

以前からクチコミもその役割を担ってきましたが、FacebookInstagramなどに投稿される広告臭の少ないユーザー目線の「リアルな商品写真」によって、その傾向はますます顕著になっています。この状況を反映して、SNS上に無数に存在する特定商品・サービスの写真や動画を収集して、SNS広告の運用を支援する企業も増えています。このようなUGC活用のトレンドから派生したサービスは今後も増え続けるでしょう。UGCはネット広告で今年押さえておきたいキーワードの一つかもしれません。

(第7回)インターネット広告と景品表示法

広告に関わる法律規制に「不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)」と呼ばれる法律があります。商品やサービスの適正な選択を阻害するような不当表示・誇大広告から、一般消費者の利益を守るために制定されました。

景品表示法では具体的に以下のようなタイプを不当表示として禁止しています。
①優良誤認表示(景表法4条1項1号)
②有利誤認表示(景表法4条1項2号)
③その他誤認されるおそれのある表示(景表法4条1項3号)
※詳細は下記サイトに詳しいです。

https://goo.gl/5GavnS

以上が景品表示法の概要ですが、ここから本題のインターネット広告と景品表示法の関係について簡単に触れます。ポイントとなるのは、平成23年10月28日(平成24年5月9日一部改訂)に消費者庁が公表した「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」と呼ばれるものです。

同資料では景品表示法上の観点から、とくに留意すべき以下5つのインターネットサービス(またはビジネスモデル)を取りまとめて事業者に注意・徹底を呼びかけています。ただし同資料で取り上げている内容は、あくまで消費者庁が検討事項として想定した例なので、景品表示法上に違反するか否かは個々の事案ごとに判断を求めるとしています。
フリーミアム
②クチコミサイト
共同購入サイトなどのフラッシュマーケティング
アフィリエイトプログラム
ドロップシッピング

①〜⑤の景品表示法にからむ問題点としてはそれぞれ、①有料である付加的なサービスを無料利用できるなどと記載するケース ②自らまたは第三者に依頼してクチコミ情報を記載し、実際の商品・サービスより著しく優良または有利であると一般消費者に誤認させるケース ③不当な二重価格表示や優良誤認表示をするケース ④バナー広告において優良誤認表示・有利誤認表示などの不当表示がされるケース ⑤商品の内容や取引条件において優良誤認または有利誤認表示をするケース などが挙げられます。

ちなみに、①〜⑤に関わる事業者のうち、どの範囲の事業者が、景品表示法上の規制を受けることになるかも気になるポイントかと思います。原則としては、自己の供給する商品又は役務についての表示を行った事業者が該当するようです。つまり、商品のメーカー、卸、小売店など、自らの商品又はサービスを供給する者は規制対象。逆にいうと、広告代理店やメディア媒体などの広告媒体事業者等は、他社からの委託を受けて広告表示の制作に関与することがありますが、それはあくまで他社の供給する商品又はサービスについての表示に関与しているだけなので、原則としては規制対象外となります。

ただし、広告媒体事業者であっても、商品又はサービスを一般消費者に提供している他の事業者と共同して商品又はサービスを提供していると認められる場合には、景品表示法の適用を受けるケースもあるようです。いずれにしても上記をふまえると、原則は規制対象外となる広告代理店やメディア媒体も、景品表示法について一定以上の基本的な内容は覚えておくべきかもしれません。